ドイツ、スイス再生可能エネルギー視察旅行
4月9日 エネルギー自立の村、フライアムトへ行く
乗用車に乗りこみ、フライブルグ市から北東20キロ、黒い森のふもとにあるフライアムト村へ行きました。ドイツとの国境の街で、ドイツの文化圏に入るようです。
フライアムト村は、風力発電やバイオガスなどの再生可能なエネルギーを生産し、村の電力自給を行っている村として有名です。
パイオニアとして再生可能なエネルギーを開発してきた方に会い、実践と効果を知ることが目的でした。
●ラインボルトさん
まずは、畜産農家からバイオガス事業に転換し、人口4300人の村のエネルギーのほとんどを支えているラインボルトさんをお訪ねしました。
途中の農村の景色は、とても美しい。最大の理由は、荒廃農地がどこにもないことだと気づきました。とうもろこし畑も今はきれいな緑のじゅうたんになっています。その光景をみながらラインボルトさんのお宅に到着、肌寒い中、ラインボルトさんは笑顔で迎えてくれました。
ラインボルトさん一家は、とうもろこしと近隣の畜産農家からの牛糞を使って、バイオガスを生産しています。
以前は畜産農家だったのですが、90年代末に起こった狂牛病事件で値が暴落し仕事がなりたたなくなったので、牛と豚あわせて450頭を処分し、バイオガスの事業を始めました。
大きな借金をかかえて、大変な決断だったと思います。
4000世帯の電気をまかない、さらに、バイオバスを出す過程で出る熱も捨てずに利用しています。ご近所14軒のお宅すべての地域暖房をまかなっているといいます。
パイプで地下を通し、それぞれのお宅で温熱に使っています。
また、400m離れた学校へも、思い切ってパイプを通し、安い値段で使ってもらっているといいます。かし、パイプ代が高くつき利益にはならないそうですが、 熱を捨てるのはもったいなし、村のためになるからと実行したそうです。
発電したときに出る熱も無駄なく利用する、コージュネとよばれる小規模発電は、いま、ドイツの省エネルギー政策で注目をあびています。
簡単に言うと、発電したうち使われる電気量は3割ほどで後は熱として逃げてしまう。原発にしても、捨てている熱量がいかに多いか。
コージュネとは、熱を逃がさず利用して地域暖房にまわす仕組みをいいます。各家庭に通ったパイプの網の目は、温水を運び各家庭に配られ、無駄なく暖房や温給水になって利用されており、化石エネルギーの使用を効率よく減らします。
また、自動車でも同じで、逃がす熱用は相当です。これを100パーセント使い切る方法が探られていました。
フライブルトでの都市計画と公共交通網の整備も、住宅の次に車を減らすことで対策で省エネしようとの計算も当然入っているでしょう。
さて、ラインボルトさんは「家族が何とか食べて行くだけの利益は出ます。8000万円の借金の返済をしながら20年計画ですが、電気の買取制度の動向が気になります。いまは1キロワット10・1セントに特別の上乗せが7セントで17セントほどなのですが・・・上乗せが中止になったら困る」
パイプラインを敷くための資金は、ほかでは行政でお金を出してくれるところもあるのですが、この村ではまだだめなので」ともいっていました。
再生可能なエネルギーの創出で頑張れるのは、買い取り制度がしっかり保障しているためだと、実感もしました。
●続いてシュナイダーさん宅です
シュナイダーさんは酪農をいとなんでいます。牛50頭、子牛が30頭。さらに林も持っており、林業も営んでいます。
このほかに、太陽パネルを使っての発電の売電、また自宅の農地に「市民風力発電」の風車を建てた地代が入るそうです。
「市民風力発電」はフライアムトの住人有志142人が始めた再生可能エネルギーへの挑戦です。
ここ数年、牛乳の値が下がり続け、とてもやってゆけなくなっているとのこと。1リットル33セントの買い取りですが「40セントでとんとんなのです」と。
そこで、自らも出資者のひとりとなり、風力発電に取りくむこととなりました。太陽パネルでは売電の値段を見て、自家用は買って済まし、パネル電気は売ったほうがいいか、あるいはその反対にするかかは、買い取り価格によって決めているといいます。
●村には5基の風車
風車の中まで入って見学して来ましたが、ちいさいものでも一基2億、大きいものだと4億かかっています。最大大きいものでプロペラの直径が80メートルもあります。
3分の一は共同出資、3分の2は地域の組合銀行からの借り入れでまわしています。
今ではさらに共同出資者が加わり、193人となりました。
風力発電は、年間1850万キロワットを発電しており、フライアムトむらの送電力使用量1200万キロワットをはるかに超えています。
フライアムト村の女性の村長さんは、自然エネルギーに対して非常に熱心だということです。
フライアムト村を見ると、行政が上からやらせたものではなく、住民が自らパイオニアとして村のエネルギー問題を解決の方向へと導き、行政を動かしているのだとわかります。
すべての方ができることではないと思います。しかし、思い切った投資のするわけですし、パイオニアとして切り開く精神はすごいものだと感心しました。
もちろん、基本的には国民のゆるぎない脱原発の考えに国も脱原発の方針を決めていること、そして二酸化炭素削減の目標を厳しく持ち、再生エネルギーへ進む姿勢があるからです。
「福島の犠牲によって、ドイツは完全に原発の息の根をとめた」といわれます。
私は、福島事故の原因の追究もあいまいなまま、またもや放射能漏れが発覚したにもかかわらず、「再稼動だ!」と強引に進めようとしている安倍政権の息の根を止めるように、原発ゼロの運動をさらに進めてゆかなくてはなりません。
毎週の金官運動の輪は大きくなっています。粘り強く、あきらめずにがんばってゆけば、必ず実る日が来ると確信を持ってがんばりましょう。
ワインを堪能
さて、昼食は200年からの歴史がある水車小屋で、昔からの農民の食事をいただきました。ソーセージや巨大な厚さのベーコン、そしてチーズは、ダイナミックでした。先にも述べたように、とにかく昼食量が半端でありません。
それでも、ソーゼージのおいしいこと!ベーコンのおいしいこと。ついつい食べ過ぎてしまいます。後が怖いぞ!!
そこからフランスの国境近くのカイザシュツールへ行きました。ぶどう酒の街です。ドイツの中でも気候が一番温暖な地域で、よいぶどうが取れるといいます。
有機栽培のブドウで、家庭内工業で年間2万5千本作っているというシュミットさん工場の見学、そして試飲をさせていただきました。試飲というより、しっかり飲んでいた方も多かったですけど。
5種類のワインがそれぞれに大変おいしく、私も堪能しました。もちろん、義息子と夫へのお土産に購入しましたよ。家庭ワイン工場なので、輸出はしないとのこと。日本では決して手に入らないワインは、価値があります。
ドイツでは、大手の工場での大量生産ではなく、このように家族で経営する小さなワイナリーで独自の製造をしているワインが多いそうです。
ビールも「どこに行ってもアサヒ、キリン」ではなくて、地方ごとに独自の地ビールが当たりまえで、それぞれ自慢しているそうです。長野で「おらほのリンゴが一番だ」と自慢するように。
●住民の運動と世論
フライアムト村を案内してくれたシュルツさんは、1970年代にフラウブルグ郊外のヴィールで起きた「原発設置反対」の大きな運動の中心的存在だった人だとお聞きしました。
20万人ほどの小さな町で繰り返されるデモは、5万人、6万人だったといいますから、どれだけすごい運動だったか想像に簡単です。
運動の中心はぶどう農家の農民でした。原発によってぶどうの生産が脅かされると、立ち上がったのです。
私たちの案内をしてくださっている村上敦さんは「廃炉にするのはそう簡単ではありません。しかし、叫び続けることです」と、日本の脱原発運動を励ましてくださいました。