2014年5月   北欧の旅の報告

ヘルシンキ第4弾

 日向ぼっこの女性と遊覧船。きっと、フィヨルドに行くのだと思います。違うフィンランドも見たいですねえ。でも、今回は、観光はちょっとだけでがまん。

 10日間いなかった間に情勢は進行して、20日には集団的自衛権が閣議決定されようとしています。
とんでもないことです。国会とは無関係な密室協議で閣議決定に持ち込むなんて。

 今日は選挙対策本部会議でした。
 選挙のことはお留守になっていた頭が、どの新聞でも報道された安倍首相の「集団的自衛権の行使」への批判で、パチッと切り替わり、さらに今日の会議でパチっパチっと切り替わりました。

              

 フィンランドの教育についての報告をします。
 ちょうど学校が夏休みはいてしまって、デンマークの時のように訪問できなかったことが残念です。でも、教員組合OAJ(これもNPO団体でした。)を訪問し、親切なレクチャーを受けることができました。
 ユニオンショップではないのに、95パーセントの組織率です。全国の教員20組織がひとつになって交渉。交渉は2年に一回。同意のサインをしたら、その期間はストは禁止。来年が交渉の年だそうです。

 左のビルがOAJの事務所です。

 レクチャーを受ける準備をしています。

 PISAテストで世界でも優秀な成績をあげているフィンランドですが、一言で言って、ガツガツしていない。のんびりしている教育との印象です。
 授業日数は190日と世界一少なく、日本は+40日。塾なんて一つもありません。
 教師の拘束時間は授業だけで約20時間前後、あとは自由研究です。お金は出すが、内容は自治体と現場に任せる、これがスタンスです。でも、いま、経済不況で、これが両刃の刃になってきています。後程また触れます。

 前にもお伝えしましたが、フィンランドは1968年に大胆な教育改革をしました。
 それまでは、4年生までが無償の教育。あとは有償だったので、教育を受ける不平等がありました。
 「フィンランドは資源もない小さい国、人材の育成こそ財産」の考えで、国会では政党すべて一致で改革に乗り出しました。今は教育費は、鉛筆の果てまで無料です。
 教育予算は国も自治体も、予算の11パーセントから12パーセント。
 GTP比で6・4パーセントです。日本は3・6パーセントで30か国世界最低ですね。

              

 フィンランドの教育制度は、義務が9年。7歳から16歳までです。
 1年生から6年生まではずっと同じ担任、7・8・9年生は教科担任制になっています。
 でも、おくての子どもさんの場合、希望で1年間入学を伸ばすこともできるそうです。

 義務教育が終わると進学です。
 進学は2つに分かれます。
 普通の高校と専修高校。後者は職業につながる高校です。

 フィンランドの日本との違いは、大学を出ることがそれほどのステータスにはならないこと。
 また、いつでも勉強しなおしすことができ、進路の変更も可能だということです。就職しても、進学を理由に求職することもできるそうです。
 ですから、大学入学者の25パーセントが25才以上です。

 教員、弁護士、医師などになる人はどうしても高校から大学に進まなければならないけれど、目的もなく進学はしないとのことです。
 資格社会なので高校を卒業しただけでは就職できないから、高校から大学ではなく、専修大学(4年で職業につながる学業。学士どまり)の道に進む子も多い。

 大学は4年で学士となりますが、それでは卒業となりません。6年間で修士を取って「卒業」です。教師の場合も、修士の資格が必用です。その上に英語、数学・・などなどの専門資格を取らなければなりません。

 さて、進学にはやはり試験があるのです。でも、日本とちょっと違うやり方です。
 受験する資格をまず取ることが求められます。
 たとえば高校から大学へ進学する場合、4教科について2回の入学認定テストがあり、それに合格して初めて大学受験資格を得ます。なかなか厳しいですね。
 認定試験に合格した子のうち、30パーセントが進学、残りは専修大学へ進むということです。

 そんな事情で大学進学率を出すのは難しいそうですが、だいたい15パーセントから20パーセントくらいのようですね。

 義務には「10年生」があります。学力がつかない場合、また進路が決まらない場合、もう一年頑張って勉強する権利をあてているのです。
 国では高校か専修高校に入ることを法律で義務つけようとしていますが、教員組合は反対していました。強制はよくないと。
 それでもドロップアウトする子のために、現場での実習を単位に換算する手立ても取っているとのこと。
 生産高校の報告もしましたが、落ちこぼれを出さないきめ細かい方策が、実はPISAの成績の優秀さの理由だとする方もいます。一部の優秀な子を育成することに力を入れるのではなく、底上げの教育の成果だというのです。

 土台に座っている、子どもの人権を守ろうとする姿勢に感銘を受けました。

 しかし、一方で、こんな話題もありました。
 「幼稚園からずっと、グループワーク、グループワークです。少子化で子どもがとても大事で期待をかけています。でも、日本と期待のかけ方は違います。いい大学にとか、出世とかにはプレッシャーをかけません。あなたは最高よ、とのメセージが強すぎて、わがままに育っています」
 「フィンランドはアルコール依存症が多い。寒くて暗い日々が多いからかもしれません。中学生の3割が飲酒をいており、問題です」
 「18人から20人学級は法律で定められているものではありません。地方財政が厳しくなる中で、地方の裁量で違いがある。教育の内容のマニュアルは地方によって変えられるので、逆にいうと、悪い環境になってゆく可能性もある」

 福祉・教育制度を前進させることは、人権を守り輝かせる社会へ向かうたたかいです。
 現場での子どもに寄り添ったたたかい、運動がなければ、制度は形骸化し後退する。それを深く実感しました。すばらしい教育をつくってきたフィンランドが、新自由主義に負けないで世界のお手本になってほしいと願います。
 わが日本、「戦争に行け、死ね」との教育は先進諸国の教育の在り方と比べる土俵が違う。

 皆さんと同じように私も、かわいい孫の世代が生きてゆく時代を考えています。

 感動があるうちに、デンマーク、フィンランドの視察旅行の一応の報告ができて、ほっと一息です。パワーポイント作成、総まとめはこれからですが、一つ肩の荷が下りました。

 あすは浅川ダム裁判、最後の証人調べです。
 明後日土曜日は北部地区に入ります。