コラム―散歩道
再び上野のホタル
「ホタルサポーターズクラブ」誕生
3年前のエッセーに私の住んでいる上野(うわの)区に流れる土京川のほたるのことを書きました。その後の話をしたいと思います。
共産党後援会の恒例の夏の行事「ホタルを観る会」が住民有志の「ホタルを観る会」に発展、川の掃除や土手の草刈、また、3面コンクリートの予定だった護岸工事をホタルに優しい工法に変えさせ工事中は幼虫を避難させるなど、20年間に渡って運動を続けてきました。
土京川のホタルは次第に住民の知るところとなり、「地元のホタルを守ろう」との声が大きくなっていきました。2006年、上野区を含む若槻地区の自治協議会が発足したおり「区としても取り組もう」と「地区内のホタル再生プロジェクト」が結成されるまでになりました。「ホタルを観る会」とプロジェクトは共同で活動をするようになりました。上野区の住民であり元信大教授の大村さんが、専門家として大きな力を発揮してくださっています。ここまでが3年前のエッセーを書いた時の状況です。
さらに今年の2月、「ホタルサポーターズクラブ」が誕生したのです。今のところ26人、地元議員の原田さんも夫も、私ももちろんメンバーです。昨晩はクラブができて初めての会議で、今年の計画が話し合われました。
上野のホタルの価値
サポーターの仕事は、土京川の環境整備、ホタルを観るイベントの時のガイド(6月24日から7月10日まで)、そして区内の河川のカワニナ生息状況とホタルの飛翔調査をしながらホタルを守り、このすばらしい財産を子どもたちにも伝えてゆくことです。
上野のホタルの価値は、「ここで生まれてここのエサを食べここで育った」まさに土着のホタルだということ、20年以上の住民運動が、ほとんどいなくなった状態から数千匹が飛翔するまでに生き返らせたことです。規模ではかなわない名所は他にもありますが、土着のホタルはめずらしく、辰野などはホタルが少ないときは数十万匹単位で輸入していると聞きました。すると遺伝子に狂いが生じそこの自然環境の変化を招くと、懸念する意見もあります。
山でも川でも、有名になるとどうしても人が入りますから、余計な手をかけ、時には環境を損ねてしまうこともありがちです。私は、土京川のホタルはできるだけ今のままで皆さんに楽しんでいただきたいなあ、と思っています。夕暮れに親子で散歩しながら楽しめるホタル、そんなイメージです。
土京川のホタルはゲンジが主、ヘイケも少しいます。でも初めに飛び始めるのはヘイケ、季節の最後を飾るのもヘイケです。
天然記念物の石の湯のホタル
天延記念物になっている志賀高原石の湯のホタルの生息地は、標高1600メートルです。そんなに寒いところになぜ?と不思議です。それは、岩倉川に流れ込む温泉で水温が厳寒の真冬でも適度な温度に保たれるからだそうです。そのような特殊な環境から、5月から9月までと言うロングランで成虫を観ることができるのです。
光ったり消えたりする明滅周期は、気温が高いと短く、低いと長くなるといわれていますが、岩の湯は低温の上に夕刻から急に冷えるので、ホタルの明滅周期はいっそう長くなるのだといわれています。
話には聞いていましたが、実は私は観たことはありません。もうそろそろ出始める頃、一度は観てみたいものです。
昨日の「ホタルサポーターズクラブ」の会議では、地区内9河川の飛翔調査の分担もありました。岩の湯のホタルの条件のように特殊ではなくても、さまざまな条件の下でのホタルの実態はどうなのだろうと、興味がわきます。私は土京川の上流を担当しました。
センス・オブ・ワンダー
人はみな、ホタルの神秘な光に惹かれます。まさにレーチェル・カーソンの言う「センス・オブ・ワンダー」です。自然に接した時の驚愕と感動は、いつでも誰の心にも、「なぜ?」とわけを知りたい要求を湧かせてくれるものです。疑問が解けてくるほどに、人間も自然の一部なのだから、共同して謙虚に生きなければと、学ばされます。海洋学者だったレーチェル・カーソンは「センス・オブ・ワンダー」でそれを言いたかったのはないでしょうか。カワニナの調査や飛翔調査も、きっと私に新たな「なぜ?」を与えてくれることでしょう。
だけど自然は、感動を与えてくれるだけのものではありません。震災も起きます。そして自然に対して傲慢になった時に受ける反撃はすざましい。福島原発事故がそうです。なんの罪もない住民の人生を狂わせ、世界中に不安をまき散らした東電と政治家の傲慢な態度は、決して許せるものではありません。被災者への保障さえも渋る社長の態度もみて、人の命さえ軽視する人にホタルを心からいとおしむような、「センス・オブ・ワンダー」は持ち合わせていないだろうと、私は思います。真の科学が欠如しています。
( 2011年4月28日 記)