3日目 5月18日
地区医療センタ―とファミリードクターの診療所

 地区医療センターとファミリードクター診療所(4・19診療所 4・19はアメリカを撃退した記念日)を訪問視察。午後は世界遺産の街並みの見学をしました。そのあと、ハバナ大学の学生二人と懇談。そして夜は、キャバレートロピカーナのショーに行くという、密度の濃い日程でした。

★地区医療センターを訪問

 キューバの医療は、ピラミッド型の3段階になっています。ベースはファミリードクター、その上に地区医療センター、その上に病院です。
 アメリカに経済封鎖され国交断絶、輸出入が封鎖され、それにも負けずに国民の健康を守ろうと編み出された、キューバの医療制度です。
 仕組みは全く違いますが、考え方としては、病気になる前の健康管理をとの医療生協とも共通するところがあると思いました。ファミリードクターと地区医療センターの範囲で、病気の8割を解決する仕組みです。
 薬も国産の材料で、次々と編み出しています。

   

 赤い枠組みが、この地域の地区医療センターの管轄範囲。赤いプロットが地区センターで、黄色のファミリードクターを管轄するところ。専門医も含めて、連携がしっかりしていました。

 ここでは仕組みを学んで、現場を見せていただきました。救急ベッドは3個、診察室も救急室も、ほんとに狭く物もない質素な中で頑張っている様子がうかがえました。

   

 経済危機、ペーパーレスを乗るきるため、インターネットを開発し情報を世界に発信できるまでになったと本では読んだが、現場にはパソコンさえなく、紙も不足で、カルテもボロボロの粗末な紙も大事にしている状況がわかりました。
 ホテルでも、インターネット回線が不十分で使えない、パソコンを持っている家庭はほとんどないとのことでした。

   

   
妊婦検診の台がありました。エイズの胎児感染の根絶や、乳児死亡率ゼロの努力を見ました。

★ファミリードクターを訪問。

 キューバではファミリードクターが、多くても約300世帯の住民に一か所配置され、ドクターは診療所を住いにし、住民に溶け込んで、病気になる前の健康管理を行っています。
 この上に、地区医療センターがあり、その上に病院があるというシステムです。
 ファミリードクターがキューバの医療の土台だと、よくわかりました。
専門医も加わって、これらが、非常によく連携がとられていることに驚きました。週2回は内科や精神科などの専門医が診療します。今日も専門医の診察の日でした。

 役割は4つ。

1 妊婦、高齢者のケア
2 疫病ケア
3 救急ケア
4 一般病気のケア

   
診療風景。ここにもゲバラの写真があった。いいのか、どうなのかは別にして。3人の学生が研修をしていました。

 昨日視察したラテンアメリカ医科大学の学生は、2年間は大学で、3年生からはファミリードクターのところで現場で患者さんと接しながら勉強もするし仕組みです。

 革命前は医師6千人。乳児死亡率1000人に対し60人。
 2017年には医師9万人、乳児死亡率ゼロになった。
エイズの胎児感染は克服したそうです。1960年には64才だった平均寿命が、今では男女とも80歳以上に伸びています。すごいことですね。

 9万人の医師のうち4万6千人がファミリードクターといいますから、ファミリードクターがキューバの医療の土台になっていることがわかります。

 ファミリードクターはその地域に住み、住民に溶け込んでいますから、訪問先の若い美人のドクターも「病気以外のことも相談される」と笑っていました。住民のすべてを4ランクに分けて把握し、訪問回数を決めていました。

4ランクとは 
1 健康
2 少し問題
3 すでに病気
4 障害がある

 つまり、患者を待っているのではなく、こちらから出かけて健康管理をしていくのが役割になっていました。

 キューバでは我が国と同じく、ガンと心臓や脳卒中で亡くなる方が多いとのことでした、高血圧の人が多いそうです。
 キューバの方は、実はとても大柄です。太い方が多いのですが、ドクターに質問したところ「キューバ人の好きな食べ物は、コメ、油、肉です。食生活の改善に取り組んでいますがなかなかむずかしい」とのことでした。
 食生活の改善は、貧困とも関連するし、酒、たばこ、運動不足も絡んでいそうです。それから野菜の量と調理法では、日本は優れていると実感します。

 現在、医大は13か所にあります。ラテンアメリカ医科大学以外は自国の医師の養成です。
 午後の学生との懇談は、教師を目指しているハバナ大学の5年生の女子学生とエンジニアを目指している理学部の男子学生の二人。別途、書きましょう。

3日目の学生さんとの懇談 キューバの教育事情と経済問題

 世界遺産をみたあと、わざわざホテルまでやってきてくれたハバナ大学の学生二人との懇談が、キューバの教育事情を具体的に知るチャンスとなりました。


エミリさんは教師をめざすハバナ大学の5年生です。教育問題が中心の話になりました。国の事情もよく把握しているし、なぜ教師になりたいかも、自分の考えをきちんと持っている聡明な女性でした。

 キューバの教育事情は、非常に困難がありますね。
 紙も鉛筆も不足、教材もほとんどない中で、教師が苦労して集めたり作ったりしているといいます。教科書はもちろん無償で配布されますが、返却するので、よごしてはいけないし、なくすなんてとんでもないことだそうです。「鉛筆は使うと減るからこまる」との話もありました。

 システムは日本と同じで、小学校(5才から)中学校、高校、大学で、小中が義務です。
 小学校でも学力が低ければ留年があります。でも、友達関係は暖かく、わかる子が教えるのが当たり前の雰囲気だといいます。

 入試はありません。ただし、小学校からの日常の成績や行いで評価されるので、自然と進学する子が決まってくるのだそうです。家庭環境が大きく左右するので、しっかりした家庭の子が進んでいくとのことでしたが、これにはちょっと、驚きましたし、疑問もわきましたが。キューバでも格差が出てきていますから。
 それと、経済的問題で、貧しい家庭では「進学するより働いてほしい」との親の要求もあるようです。

進学ルートから外れた子は、職業訓練所などがあるそうです。

 もう一つ、キューバの大問題は教師のなり手がいないこと。教員が3000人も不足しているといいます。
 理由の一番は給料の低さとのこと。国民がもらっている給料額の真ん中より下のほうだそうです。
 エミリさんはまだ学生でが、すでに現場で教えているそうです。
 学生が現場で教えるのは、日本では考えにくい。キューバでは当たり前で、高校生が中学校で教える事もあるそうです。教師不足とともに、これは医療現場と同じで現場主義もあるのでしょうか。現場を踏みながら教員になっていくという意味合いもあるようです。現場主義というのが、すべての考えの基本にありました。

 エミリさんは情熱をもって教師になりたいと思っている人でした。オープンドアという名の教師になろうと呼び掛ける運動もしていました。

 「給料を上げてほしいとの要求の声は上がらないのか」との質問には厳しい答えが変返ってきました。「政府に反対の声を上げると圧力がかかる。ものが言えない雰囲気がある」というのです。
 それが本当だとすれば、これから先の発展に陰りがあると思いました。克服すべき課題でしょう。一方では選挙権は16才からで世界最年少、議員への立候補は自由で共産党員でなくてもいいしお金もかからない(供託金がない)との面もありました。

 「ではどんな仕事が人気なのですか」とお聞きしたら「観光業」だそうです。今、一番儲ける仕事だと。
 そのため、大学でも日本語を教える教授がいなくなっているとのこと、大学教授が大学をやめてガイドになると。そのほうが収入になるからです。
 医師が退職後、タクシーの運転手さんになったら、収入がぐんと上がったとの話もあります。
 キューバは2重通貨で、通常観光客が使う兌換ペソは、普通のペソの24倍もするのですから、うなづけますね。チェ・ゲバラがえがかれている1ペソを観光客に売ることが、いいアルバイトになっているそうです。24倍になるのだものね。
 給料は普通の公務員で日本円にして約3千円、医師で6千円から7千円、それに比べ、民間の仕事は2万円から3万円だそうです。
 これでは知的財産が構築されないのではとの危惧を覚えましたし、キューバの経済政策の打開に苦心しているところかと思いました。
 「エミリさんのような教育に情熱を持った人に頑張っていただきたい、そんな人材は日本でもぜひほしい」と、メッセージをおくりました。


毎日の食事で楽しいのは、昼間からのビール。モフィートはキューバのカクテル。ミントの香りいっぱいのラム酒のカクテルです。おいしかった。

3日目夜  トロピカルショーへ


せっかくキューバに来たのだから、行ってみようとトロピカルショーへ。

 100人近くの歌い手踊り手が広げる舞台は、とてもきれいでウキウキしました。
 チケットは少々お高くて、約2万円近くだったかな。
始まりは夜の10時、終わりは12時近く。キューバ的には宵の口だそうだが、「遅いから眠くなる」と言っていた男性に「見たとたん、目がぱっちりさめるわよ!」と。
 キューバの女性は、ほんとにお尻がプリンと盛り上がっていて大きくて魅力的、おしりは見せるためのものとのユニフォームです。スタイルの良い美人が踊る、ラテンアメリカならではのあでやかでちょいとセクシーな踊りだもの、これは目が覚めますよね。
 相当なエネルギーを使うダンスです。街で見るキューバ女性とは違って、痩せてスタイルがいい。やっぱり運動か、遺伝子ではない・・・・と思いました。!(^^)!


トロピカル劇場は国立で、だからダンサーや歌手は公務員とのこと。

 とても訓練された踊りと歌でしたよ。
この劇場には、半ズボンやサンダルでは入れませんでした。かといって、正装ではなく、普段着です。