ドイツ、スイス再生可能エネルギー視察旅行

4月8日 公共交通網と都市計画

フライブルグの街

フライブルグの街 ドイツでの最初の行動はフライブルグの旧市内(中世時代の城壁内の街)の見学でした。
 公共交通網を使っての街歩きです。公共交通網でしか入れないといったほうが正しいですね。旧市内は車の乗り入れ禁止です。
 フライブルグは人口22万人、1千年の古い歴史を持つ長野市より小さい市で、学園都市です。大学は5つ、フライブルグ大学の学生をはじめ、若い人たちで街は活気があり、平日にもかかわらず、日曜日でも閑散としている日本の街並みとはまったく違う光景でした。
 これは、フライブルグが、25000人の学生がいることももちろんですが、都市計画事業に成功している姿だと私は思いました。

 日本と違い、すみわけがしっかりしています。農村の役割、都市の役割を明確にしての計画が実行されているのです。都市計画ではまず足の確保が重要視され、しかもすみわけができているので住宅地が密集しているため交通網も作りやすく市民の足は確保されています

 フライブルグはこれといって収入源のない街ですが、驚いたのは、市役所が60箇所あり(日本の支所とは違って、役割で事務所が分担しているそうです)、市職が3500人、行政職だけで7000人いるといいます。
 ドイツ最大の病院、フライブルグ病院はベッド数3500、職員は1万人だそうです。
 雇用がしっかりしており、よって、貧しいながらもお金は地元を回る仕組みもあります。
 長野より小さい市ですから、いかに行政職が多いかがわかります。驚いたことには、市には「緑の施設課」があり、そこだけで200人の職員がいます。緑をどれだけ大事にしているか、聞いてこれもたまげました。

都市計画

 初めに都市計画の話に触れたいと思います。
郊外の計画的にできたバーボン住宅地区に行ったときの、村上さんの説明は強烈なものでした。
 バーボン地区の地図を見せてくれ、「ほら、緑のプロットがあちこちにありますが、これは何だと思いますか」とまず質問です。「なんでしょう?」
都市計画で一番先にすることは、腰丈以上あり幹周り40センチ以上ある樹木を調べることだそうです。緑のスポット点はその位置でした。
このスポットが最優先で守られます。樹木を守るためには、住宅の建設設計も変更します。その木がたとえ、個人の持ち物でも勝手に切ることはできないそうです。
 樹木がもたらす空気清浄化と生態系を守ることは最優先、これほどの省エネはありません。木は即大きくはならない。だから大事にして、またその一本の木だけでなく緑のネットワークをつくって生態系を守っているところまで工夫されていました。
 「ほら、団地の中は緑が点ではなく細いベルトになって途切れなくつながっているでしょう。こうしてこそ、さまざまな木や草が生え、鳥と虫のバランスも守れるのです」
 なるほど、団地内にスポット的にちょっと緑の公園を作ったからいい、なんて姑息な考えではないんだ、とまずびっくりしました。そのために緑の市職が200人もいるのです!!
 写真にも収めてきましたが、見事に住宅建設が樹木に譲歩していました。こんな発想は日本にあるでしょうか。「この木は邪魔だから切ってしまえ」となるのではないでしょうか。
 「都市計画の次にやることは、団地への路線電車の線を引くことです。住民の足の確保がなければ住むことはできません」と。
 自然の計り知れない力を最大限利用し、環境を守り省エネに努力しており、さらに人のすめる住宅街を計画的に作っているとは、すごいことです。

 さらにそれ以前の課題があります。
 都市計画での基準を作る調査は、20年に一度、市民参加で行われるそうですが、まずは人口の増減を把握することが肝心。専門化がやります。その一定幅のある人口の把握をしたことから、それを基準にして計画を練ります。
 今の計画は2020年を見越した実行だそうです。

 計画のねりかたです。
 人口の増減によって住宅の確保の面積が決まり、それではどこを住宅地にするか、または空き家ができるのでどう埋めてゆくかが、森として守る場所と田畑の面積も、住民参加で見当され、議会で決議され市長が印を押すと、法律が成立。森も畑も守る立場で考えています。
 人口が増えた場合は、どこに住宅を意作るのか、が検討されます。自分の好き勝手なところへの建設は許されません。必要なだけの住宅を用意するので、日本のように、農業がだめだからせめてアパート代でもと、田畑を壊して宅地にしても、誰も入居者がいない、なんてことはないわけです。
 フライブルグでは新しくどんなお店を始めるかも、市議会の決定で決められ、勝手にはできないのだそうです。
 それは、人口などかんがみ、サービスが過剰供給しないように110パーセントから120パーセントのところで許可を出すそうです。過剰供給になれば、結局競争で弱者は衰退し、大手が残り、結果的に街が壊れる運命にあると。
 新規参入者にハードルがある一面、この均衡が結局、地域経済を守っているといいます。だから新しく始める人は、やめる人から権利を買うか、あるいは議会に訴えて検討をしてもらうしかないのだそうです。
 考えさせられる問題でした。日本は、都市計画は競争原理が基本の開発中心、住宅地はすでに崩壊しています。

 農地も森も住宅も、民意を反映した議会ですみわけを決め、決まったからには実践する、そこがすごいなと思いました。市民参加で決定するという当たり前のことが市民を納得させるのでしょうか。
 日本では、計画書はコンサルタントに作ってもらってあるが、塗り絵だけで何の拘束力もなく乱開発が行われています。郊外にどんどんと大型スーパーやモール街ができるなどできて、交通弱者、買い物難民が出ている状態とは正反対です。
 しばりの強さは、たとえば自分の土地であっても「森」と決まったら従わなくてはならないところにも現れています。
 そして、この住まいや工場、店などと森、田畑のすみわけ計画が、実は省エネとエネルギー対策に密接に結びついているのでした。これは跡で触れることにします。

緻密な公共交通網

 今日は一日、公共交通を利用して行動しました。
 公共交通網の考え方とその整備を目の当たりにしましたが、そこに、フライブルグの市民のスタンスが伝わってきました。

 まず驚いたのは、駅に改札口がないことです。さらに電車のホームから路線電車の駅は直接つながっており、電車から路面電車への乗り換えは非常に楽です。
 電車を降りてホームの階段を上ったら、そこは路面電車のホームでした。

路面電車

 路面電車は、旧フライブルグ街の中心から4方向八路線があり全市を網羅しています。
 7.5分に一度、縦横無尽に街中を路面電車が行きかっています。車がないためですが、人と電車とが入り乱れて行きかっている様子は、日本では見られません。
 フライブルグ22万人と近隣の村を合わせて人口約60万人が、のべ年間1億人が利用しているそうです。高い利用率です。
 電車や路面電車には、乳母車に乗せた子供連れのお母さん、お父さんもたくさんいました。乳母車がは4つのタイヤが太くしっかりとしたもので、比較的大きなものでしたが、楽に乗れていました。
 私たちの仲間にあやされて「きゃっきゃ」と笑っていました。子どもの笑顔に周りが明るくなるのは万国共通ですね。

独自のパス券

 利用が高い一番の鍵は独自の定期券の発行です。
 月51ユーロ(日本円で約5000円程度)の負担で買うパスで、バス、電車、路面電車のすべての公共交通網が乗り放題なのです。
 ごくたまに、定期券の検査がやってくるようですがそのとき見つかれば罰金!通常はみなさん、自由に乗り降りしているそうです。

バスを待っています

 さて、我々旅行者はというと、宿賃の中に200円ほどの定期券代(何とか税として)がすでに取られており、特別の定期券が発行されていました。それを使って今日は乗り放題でフライブルグを探索しました。
 これはアイデアですね。旅行者にとってはハードルが低くなります。
 今日もお金のやり取りでは大変苦労しました。まして乗り物となると、どこへ行くのかいくら払うのか、皆目わからなくては緊張の連続になるでしょう。

 フライブルグの旧市内に車を入れなくなったには訳があります。
 第二次世界大戦で街並みが壊され、再生にはジグザグはありましたが、結果的には昔の街並みを復活させました。ところが、昔の道は碁盤の目のようにきちんと整備されていないため、車社会になったとき渋滞が大問題になりました。
 その解消のためもあって、思い切って車の乗り入れを禁止したとのこと。もちろんすんなりとはいかなかったのですが、粘り強い住民の話し合いで進め、公共交通網を充実させたいまは、指示を得ているそうです。
 街中歩行者天国で、人出がすごく、いっぱいです。聞くところによると、中心街の混雑が激しくなったので、車の乗り入れができない区域を広げる計画に着手しているとのことです。
 どこも閑古鳥が鳴いている日本の商店街からは想像ができません。

 ドイツには電力会社が800社もあります。国営、民営、第3セクターだそうで、9社に独占されている日本とはまったく違う条件です。
 電気が商品になった時、初めは高額なため、あるいは普及に時間がかかったため、マイナスになった。だから、路面電車を通し、そこでの儲けをつぎ込んだが、今では逆転、利益を公共交通網授業に補填しているとのことでした。
 そうした街づくりには必ず市民が参加して自ら決めてきた歴史が、私たちを勇気づけます。歴史や条件の違いはあれ、ことをなすときの本質は、いつでも同じです。

省エネ住宅

 午後は省エネ住宅団地などの視察でしたが、ここでも、未来を見通したスタンスの長い、壮大な取り組みに感嘆しました。

 この定期パス券は、実は再生可能なエネルギーとも深く関係していました。
 疲れたので、それについては明日、書きます。今日はここまで。
 都市計画、省エネ、エネルギー対策、地方の経済、そして社会保障もいったいのものとして考えてゆかなければならず、部分的にチョコチョコやるだけでは抜本的解決にはならないことを実感した一日でした。