2014年5月 北欧の旅の報告
ヘルシンキ第3弾
今日はH保育園の発達相談日でした。時差ボケが解消していないらしく、眠くてたまらず、集中するのにネルギーを使いました。
運転も大変で、まいった。
今回は老人福祉を報告します。
ヘルシンキアルツハイマーNPOとデイケア、ヘルシンキ市老人ホームを訪問しました。
フィンランドでは、まえにも書きましたように、「65歳以上の高齢者に必要なケアは必ず行わなければならない」との法律があり、それが基本的なスタンスになっています。
単に高齢者を大切にする人権思想だけでなく、「若者の支援のため」と考えるところに、私は改めて新鮮な視点を発見した思いでした。
「高齢化社会。若者が年寄りを背負うのは大変だから、年よりも負担して当たり前。まして年寄りは小金を持っている」との発想とは天と地の違いですね。
ガイドの亀谷さんのお話では、「高齢者も自立を望んでおり、若い人を頼らなくても国の世話で自立したい。若者は家族として一緒にいることは喜んでいるが、介護は専門家がするものだと考えている」のだそうです。
アルツハイマーNPOとデイケアを訪問
アルツハイマーNPOは、1986年にフィンランドで初めての施設、当時は研究は進んでいたが、高齢者を預けることは珍しかった。
日本でもごく最近まで、家族を施設の預けることには抵抗がありました。
その後、全国で43のNGO、ヘルシンキだけで15のセンターがあると言います。人口60万人(長野の1、5倍ほどですね)のヘルシンキですから、アルツハイマーだけでのセンターですから、非常に多いと言えます。
利用には医師の認定を受けることが必要です。
所長さんのレクチャーを受けました。フィンランド風のおもてなしを受けました。
おもてなしの時、フィンランドでよく作るケーキだそうです。ナッツ、レーズンなど入っているとってもおいしいケーキでした!
訪れたデイケアには、一日14人の重い痴ほう症の方が毎日通っていました。そのほかに、軽い方のグループが3つあるそうです。
利用料は一日15ユーロ、でも、本人の負担はゼロです。
財政的には、ヘルシンキ市からの補助。委託を受けている仕組みですが、不足は、やはりNPOのスロットマシーン営業の収益を寄付してもらっています。
NPOスロットマシーンの収益は、慈善事業にしか使ってはいけないことになっています。
うーん、笹川良一氏を思い出しましたよ。
送迎は家族、もしくはタクシーです。タクシー代も本人は無料です。
認知症だと認識し、精神的に将来不安を抱えている軽いかたのケアも丁寧に行われていました。
NPOの相談活動として、電話相談もしていますが、電話は鳴りっぱなしだとのこと。ちょうどに出れなかったでんわやメールで来た相談も含めて、その日のうちに直接電話で対応する努力が行われていました。
また家族のケアのために、家族のグループも作っていました。
そのほかに痴ほう症の対処では、痴呆コージュネーターが5〜60か所にあり、一人50人を担当して、電話でのサポートをしています。
たとえば一人暮らしの方に「目覚めたか」「薬は飲んだか」など、忘れっぽいっぽい暮らしの流れを援助して、話し相手にもなっているのです。丁寧な対応だと思いました。心強いことですね。
フィンランドでも、家族が介護で苦労するのは同じでしたが、家族だけで倒れそうになって介護している日本とは違っていましたね。
でも市も財政的に厳しくなって、どこまで補助金を出すか、問題になってるとのこと。
フィンランドでもどの分野でも経済不況、財政難の影響が出ています。EUの嵐の影響がないはずはありませんね。
「家族だけだと介護の大変さで、本人の持っている力を出させることは困難、それは仕方のないこと。だから、デイケアは大事なことだ」と署長さんが話してくれました。
デイに通っている皆さんと交流。私たちのために歌を練習してきて、披露してくれました。私たちもお礼に「ふるさと」を歌いました。
ここもデイの部屋です。どこへ行っても「施設」を感じさせない、アットホームで落ち着いた素敵なたたずまいです。
老人ホームに行く
ムンツキニエミセンターは、ヘルシンキで一番大きなセンターで、デイケアと老人ホームを持っています。
ここでは老人ホームの話をします。
老人ホームは、最後の最後に利用するところで、亡くなるまでいる終の棲家になります。しかも寝たきりは引き受けないそうです。
最後まで自分の力で生きてゆくことを目標にケアしているそうです。
シングルが11、二人部屋が18室。二人部屋は、夫婦とか兄弟とか、できるだけ身内や知り合いにするようにしています。
200名、300名入れるホームもあるそうです。
施設内に体力増進コーナーがあって、市民は誰でも利用できるとのことでした。
私の質問は「日本では特養に入れずに何年も待つ状況。入れない人はどうするのか」でした。
応えはシンプルでした。
「連絡があってから1週間以内に相談、3か月以内で入所先を決める決まりがあります。だから、3か月過ぎることは決してありません」と断言。
「でも、満員になっては・・・」との疑問に「入所して亡くなるまでの平均年数は2年から3年です。最近は1〜2年です。最後の最後に来るところです」とのことでした。
要するに、総合的な介護システムが充実しているから、在宅やディケアなどでもなんとか乗り越える仕組みがあるということなのだなあと感じました。
フィンランドでは公の施設ではなくNPOが頑張っています。
政府としては、補助金で済むならその方が安上がりですし、NPOや独立法人は公的施設を待つより必要に応じて早めに準備することができますし、デンマークの老人ホームで見たように、給食の外注を拒否するなどある程度自由も利くことでしょう。
日本と違い、委託して補助金もきちんと出しているから、一長一短です。
NPOを支えているのが、ボランティアです。
フィンランドは資格社会で、掃除のパートのおばさんでも、飲食店でのアルバイトでも資格が必要です。
ですから、資格のある定年退職した元気な多くの方が、ボランティアをしたいと希望しているそうです。政府としては、大いに助かるところですね。
教育が残りました。PISAで世界で上位にいるフィンランドの教育は、皆さんも一番の関心ごとではありませんか? 次回にしますね。